韓国移住は、住む場所より先に在留資格が決まる。そして就労系の在留資格は、勤務先と職種に紐づいている。E-7 は雇用主がスポンサーになって初めて申請できる資格で、D-10 は「求職活動の許可」であって就労の許可ではない。H-1(ワーキングホリデー)には年齢制限があり、日本人が真っ先に思いつく会話講師や家庭教師は禁止職種に入っている。
つまり「とりあえず移住して、住みながら仕事を探す」という順番は、制度上ほぼ成立しない。移住計画は、部屋探しからではなく雇用契約から逆算するのが正しい。この記事は、その逆算に必要な順番と、後から効いてくる落とし穴だけを扱う。
韓国移住で最初に決めるのは住居ではなく在留資格
移住の実務は、次の順番で固定される。この順番を入れ替えられる資格は、スポンサー不要の F 系(F-4・F-5 など)に限られる。
| 順番 | やること | 誰が主体か |
|---|---|---|
| 1 | 職種を決める | 本人 |
| 2 | 雇用主を見つけ、内定を得る | 本人+企業 |
| 3 | 在留資格を申請する(E-7 など) | 雇用主が申請主体になる資格がある |
| 4 | 入国する | 本人 |
| 5 | 外国人登録(入国後90日以内) | 本人 |
| 6 | 銀行口座・携帯電話・賃貸契約 | 本人(外国人登録証が前提) |
日本国内での転職なら 1 と 2 の間に住む場所を決められるが、韓国移住では 3 が終わるまで生活基盤の契約がほとんど進まない。順番を守らないと、入国してから動けない期間が長くなる。
「移住してから仕事を探す」がなぜ制度上成立しないのか
在留資格は「どんな活動が認められるか」を定義するもので、就労系の資格はその活動が勤務先と職種で特定される。E-7 は雇用主が指定職種でスポンサー申請をする仕組みなので、雇用主が決まっていない状態では申請そのものが始まらない。
一方、求職のための資格である D-10 は点数制で滞在は認められるが、これは求職活動の許可であって就労の許可ではない。「D-10 で入国して、働きながら正社員の口を探す」という発想は、その資格が認める活動の外に出る。
結果として、移住の入口は次の 2 通りしかない。
- 雇用主を先に確保する(E-7 など、スポンサー型)
- 雇用主に依存しない資格を持っている(F-4、F-5 など)
この 2 つに当てはまらない場合、残るのは H-1(ワーキングホリデー)だが、後述のとおり年齢と職種の制限があり、移住の恒久的な入口としては設計されていない。
就労系の在留資格はスポンサーが要るか、要らないかで分かれる
移住の難易度は、資格の名前より「雇用主のスポンサーが要るかどうか」で決まる。
| 在留資格 | 雇用主のスポンサー | 就労 | 家族の帯同 | 主な条件 |
|---|---|---|---|---|
| E-7 | 必要(雇用主が指定職種で申請) | 可(申請された職種) | 配偶者・未成年の子を F-3 で招請可 | 職種が指定される |
| D-10(求職) | 不要 | 不可(求職活動の許可) | 総点80点以上で配偶者・未成年の子を F-3 で招請可 | 点数制 |
| H-1(ワーキングホリデー) | 不要 | 条件付き(禁止職種あり) | 公式ページで確認 | 年齢制限あり/就労のみを目的とした滞在は不可 |
| F-4(在外同胞) | 不要 | 可(単純労務など一部職種は制限) | 公式ページで確認 | 親または祖父母が韓国国籍だった者で外国国籍を取得した者 |
| F-5(永住) | 不要 | 制限が最も少ない | 公式ページで確認 | 永住者居住カードの有効期間は10年 |
要件の細目と必要書類は改定されるので、申請の直前には必ず HiKorea(hikorea.go.kr)と出入国・外国人政策本部(immigration.go.kr)で確認してほしい。この記事では確定している骨格だけを扱う。
E-7 は雇用主が申請主体になる
E-7 は、雇用主が指定された職種でスポンサー申請を行う資格だ。本人が単独で「E-7 を取ってから就職する」ことはできない。移住の実務がすべて求人探しに前倒しされるのは、この一点が理由になる。
E-7 で滞在する場合、配偶者と未成年の子を F-3(同伴家族)として招請できる。家族での移住を考えているなら、本人の資格が家族の資格を規定するという構造を最初に理解しておくべきだ。
逆に言えば、E-7 は雇用主との関係が在留の土台になる。転職や退職が在留に直結するため、日本国内の転職と同じ感覚で会社を辞める判断はできない。この点は後述の「後悔」の項目で改めて扱う。
D-10 は滞在できるが働けない
D-10 は求職のための在留資格で、点数制で審査される。総点が 80 点以上であれば、配偶者と未成年の子を F-3 で招請できる。
重要なのは、D-10 は就労の許可ではないという点だ。名前から「就職活動用の就労可能ビザ」と誤解されやすいが、認められているのは求職活動であって就労ではない。移住前の想定として「D-10 で入って生活費はアルバイトで賄う」という計画を立てているなら、その前提から作り直す必要がある。
D-10 が有効に機能するのは、貯蓄で無収入期間を支えられる人、すでに面接が動いている人、既に韓国内に人脈があって選考が短期で終わる見込みの人に限られる。
H-1(ワーキングホリデー)には年齢と職種の二重の制限がある
日本国籍者の H-1 の条件は以下のとおり。
| 項目 | 内容(日本国籍者) |
|---|---|
| 年齢 | 原則 18〜25歳、事由が認められる場合は 30歳以下 |
| 残高証明 | 30万円以上(往復航空券を用意しない場合は 40万円で航空券不要) |
| 禁止職種 | 医師・弁護士・教授・パイロット・会話講師・家庭教師、遊興業、取材および政治活動 |
| 滞在の目的 | 就労のみを目的とした滞在は不可(観光活動を併せて行うことが前提) |
禁止職種に会話講師と家庭教師が入っている点は、事前に知らないと計画が丸ごと崩れる。「ワーホリで韓国に行って日本語を教えながら暮らす」という定番の想定は、この一行で成立しなくなる。
条件は国籍ごとに異なる。たとえば台湾籍の場合は 18〜34歳(35歳になる日に資格を失う)、クオータ 800名、残高 3,000ドル、年間 1,300時間という別の枠組みが適用される。自分の国籍の枠を、自分の国の韓国大使館・代表部の案内で確認すること。日本国籍者は駐日韓国大使館(overseas.mofa.go.kr/jp-ja)が一次情報になる。
F-4(在外同胞)はスポンサー不要という例外
F-4 は、親または祖父母が韓国国籍だった者で外国国籍を取得した人が対象になる資格だ。E-7 との決定的な違いは、雇用主のスポンサーが不要な点にある。移住してから仕事を探す順番が現実的に成立するのは、この系統の資格に限られる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 親または祖父母が韓国国籍だった者で、外国国籍を取得した者 |
| 発給 | 複数入国 5年有効、滞在期間 2年 |
| 就労 | 単純労務など一部の職種は制限 |
| 欠格 | 最近3年内に出入国法違反で 700万ウォン以上、最近5年内に実刑 |
在日コリアンの家系で日本国籍を取得している場合、この資格に該当する可能性がある。該当しそうなら、E-7 の求人探しよりも先に F-4 の要件確認をするほうが移住全体の設計が変わる。
F-5(永住)までの道のりはどう並ぶか
一般的な経路は 就労資格(E-7 など)→ F-2 → F-5 の順に並ぶ。つまり永住は移住の入口ではなく、就労で入った人が年数をかけて到達する出口にあたる。
永住者居住カードの有効期間は 10年。ここまで来ると雇用主への依存が外れるが、そこに至る最初の一歩はやはり「誰かに雇われること」から始まる。移住を長期の計画として考えるなら、最初の職を「永住までの経路の 1 段目」として選ぶ視点が要る。
入国後90日:外国人登録証がないと生活が始まらない
90日を超えて滞在する外国人は、入国後 90日以内に管轄の出入国事務所で外国人登録をする。これは移住の事務手続きの中で最も期限が明確なものだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 90日を超えて滞在する外国人 |
| 期限 | 入国後90日以内に管轄の出入国事務所で登録 |
| 免除 | A-1/A-2/A-3 |
| 住所変更 | 変更から 14日以内に届け出 |
| 問い合わせ | 1345(外国人総合案内センター) |
| ないと詰まること | 銀行口座の開設、携帯電話の契約、各種契約 |
外国人登録証がないと、銀行口座も携帯電話も契約できない。給与の受け取り口座がなければ、就職していても生活が回らない。移住直後の数週間は「手続きが終わるまで何もできない期間」として、あらかじめ生活費を確保しておく前提で組んだほうがいい。住所を変えたときの 14日以内の届け出も、忘れがちなわりに後で効いてくる。
2026年の韓国の最低賃金はいくらか
収入の下限は法律で決まっている。外国人労働者にも同一に適用される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2026年 時給 | 10,320ウォン(2025年比 +2.9%) |
| 2025年 時給 | 10,030ウォン |
| 月額(209時間換算) | 2,156,880ウォン |
| 施行 | 2026年1月1日 |
| 適用 | 外国人労働者にも同一適用 |
円換算は為替次第で大きく動くので、この記事では換算しない。移住の可否を金額で判断するなら、その日のレートで自分で計算するのが唯一正しいやり方だ。加えて、ソウルの家賃制度(保証金の慣行)は日本と前提が違うため、月額の額面だけで生活を見積もると外れる。
「韓国に移住して後悔する」のはどういうときか
体験談ではなく、制度から説明できる範囲で書く。後悔の多くは、事前に構造を知っていれば避けられるところに発生する。
| 落とし穴 | 制度上の理由 | 事前にできること |
|---|---|---|
| 仕事を辞めると在留が揺らぐ | 就労資格が雇用主・職種に紐づく | 転職の可否と条件を入国前に確認する |
| 求職資格で働こうとして詰まる | D-10 は就労の許可ではない | 無収入期間の生活費を先に確保する |
| ワーホリで想定した仕事に就けない | 会話講師・家庭教師が禁止職種 | 禁止職種を出発前に一覧で確認する |
| 入国後すぐ生活が動かない | 外国人登録証がないと契約ができない | 登録完了までの数週間分を見込む |
| 収入の見積もりが外れる | 為替と家賃制度の前提が日本と違う | 額面ではなく手残りで計算する |
| そもそも入口の求人が少ない | 韓国語人材の求人は「韓国勤務」より他国のほうが多い | 次の項で実測値を見る |
もうひとつ、統計ではなく構造の話として。韓国移住を「韓国が好きだから」で決めた場合、最初に折れるのは好意ではなく生活の摩擦のほうだ。仕事の内容、通勤、契約、収支といった移住後に毎日繰り返される要素を、移住前に一度も具体化していないと、好意は摩擦を吸収してくれない。逆算の起点を仕事に置くべき理由はここにもある。
求人在庫の実測:韓国勤務は44件、日本国内の韓国語求人は687件
ここからは、当サイトが実際に募集中として保有している求人の実測値だ。体験談ブログには出せない数字なので、移住の現実感を測る材料として使ってほしい。
現在、全世界で募集中の求人は 1,943件/1,392社。そのうち 韓国勤務は 44件(43社) にとどまる。全体の約 2.3% だ。一方、日本国内の韓国語求人は 687件(348社) ある。つまり韓国語を使って働く機会は、韓国に移住するより日本国内に留まるほうが 15倍以上多い。
| 項目 | 韓国勤務 | 日本国内(韓国語求人) |
|---|---|---|
| 件数 | 44 | 687 |
| 企業数 | 43 | 348 |
| 上級レベル要件 | 15 | 446 |
| 中級レベル要件 | 29 | 236 |
| 最多職種 | 通訳・翻訳 16 | 通訳・翻訳 176 |
韓国勤務 44件の職種内訳は次のとおり。
| 職種 | 件数 |
|---|---|
| 通訳・翻訳 | 16 |
| 貿易 | 5 |
| 医療 | 5 |
| 営業 | 4 |
| マーケティング | 4 |
| 人事 | 2 |
この数字が示すのは、「韓国で働く」という枠が狭いという事実であって、韓国移住が不可能だという意味ではない。ただし 44件という規模は、職種を絞り込みすぎると候補がゼロになる規模でもある。募集中の求人は 韓国勤務の求人一覧 と 日本国内の韓国語求人 で確認できる。
補足として、リモート勤務の求人は全体で 231件ある。移住せずに韓国語を仕事にする選択肢は、韓国勤務の 44件より圧倒的に広い。移住が唯一の道ではないことは、在庫の形からも読み取れる。
韓国語レベルはどのくらい求められるか
要求水準は勤務地によって傾向が違う。当サイトの在庫では、次のように分かれている。
| 勤務地 | 上級 | 中級 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 15 | 29 | 中級が多数(44件中29件) |
| 日本 | 446 | 236 | 上級が多数(687件中446件) |
| 中国 | 465 | 64 | 上級が圧倒的 |
| ベトナム | 206 | 90 | 上級寄り |
韓国勤務の求人は中級要件のほうが多い。母数が小さいので断定はできないが、「韓国語が上級でないから移住は無理」という前提は、少なくとも在庫の形とは一致しない。中級レベルで応募できる求人は 中級レベルの求人一覧 にまとまっている。
職種で見ると、どの国でも 通訳・翻訳 が最大の受け皿になる。韓国語を主な武器にして移住を考えるなら、まずこの職種の相場と要件を見てから、周辺職種に広げるのが探し方として速い。
移住を決める前に確認する順番
判断材料を揃える順番はこうなる。
| 段階 | 確認すること | 一次情報 |
|---|---|---|
| 1 | 自分が F-4 に該当しないか(親・祖父母の国籍) | immigration.go.kr/hikorea.go.kr |
| 2 | H-1 の年齢枠に入るか、禁止職種に当たらないか | 駐日韓国大使館 overseas.mofa.go.kr/jp-ja |
| 3 | E-7 でスポンサーになり得る求人があるか | 求人一覧 |
| 4 | 無収入期間を何か月支えられるか | 自分の家計 |
| 5 | 外国人登録までの数週間の段取り | 1345(外国人総合案内センター) |
1 と 2 は自分の属性で決まるので、最初に潰す。3 で候補がゼロなら、移住の時期そのものを見直す判断ができる。ここを飛ばして部屋探しやビザ代行の相談から始めると、後戻りのコストが大きくなる。
よくある質問
Q. 観光ビザで入国して、現地で就職活動をしてもいいか。
在留資格ごとに認められる活動が決まっている。就労系の資格は勤務先と職種に紐づくため、資格が認める範囲を超える活動はできない。個別の可否は 1345 または HiKorea で確認してほしい。
Q. D-10 を取れば働けるか。
働けない。D-10 は求職活動の許可であって、就労の許可ではない。
Q. E-7 の申請は自分でできるか。
E-7 は雇用主が指定職種でスポンサー申請をする仕組みなので、雇用主が決まっていない段階では始まらない。
Q. 家族を連れて行けるか。
E-7 では配偶者と未成年の子を F-3(同伴家族)として招請できる。D-10 でも総点 80点以上であれば同様に招請できる。
Q. 韓国語が中級でも仕事はあるか。
当サイトの韓国勤務 44件のうち 29件が中級要件だ。ただし母数が小さいので、日本国内の求人も並行して見るほうが現実的な比較になる。
Q. 移住しないで韓国語を使う仕事はあるか。
ある。日本国内の韓国語求人は 687件、リモート求人は全体で 231件ある。
---
求人件数などの数値は記事更新時点(2026年9月3日)のものであり、日々変動する。ビザ要件・金額・クオータなどの制度情報は改定されるため、申請前に必ず HiKorea(hikorea.go.kr、問い合わせ 1345)および出入国・外国人政策本部(immigration.go.kr)の公式ページで最新の内容を確認してほしい。